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最高裁判所第三小法廷 昭和32年(オ)758号 判決 1960年2月09日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中村領策の上告理由について。

農地の所有権の移転につき、農地法三条により知事の与える許可は移転の効力を完成せしめる行為にすぎないから、右移転行為にして取り消し得べきものであるときは、許可のあつた後においてこれを取り消すことができると解するのが相当であり、またその結果該所有権がいわゆる不在地主に復帰することとなつても、国による買収の対象となることのあるのは別論として、そのために右の取消が許されないと解すべきいわれは存しない。されば本件において上告人の実父安念作蔵から上告人に対してなされた本件農地の贈与が被上告人に対する詐害行為の要件を充足すること原判示のとおりである以上、たとえこれを理由とする本取消が右贈与に対する知事の許可後になされ、かつ右取消により本件農地の所有権が既に他市に転住した前記作蔵に復帰することとなるからといつて、該取消が許されないといえないことは明らかで、右と同趣旨に出た原判決はまことに相当であり、所論は違憲をいう点もあるが、実質上すべて上記と異なる独自の見解に基いて原判決を論難するものでしかなく、採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

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